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豊田市博物館開館1周年

岸田吟香と岸田劉生展  2025.5.2

第一章では書の作品がずらり。幕末から明治・大正期に至る日本の書の流れがわかる。

 
 
 豊田市博物館で4月26日から、開館1周年と、郷土ゆかりの人物である岸田の没後120年を記念した企画展「岸田吟香と岸田劉生 ─近代、それは東洋にあり─」が始まった。期間は6月15日まで。
 
 岸田吟香は挙母藩の儒官で、明治期には事業家・ジャーナリストとして西洋の文化芸術を普及させ、また中国から最先端の書を日本にもたらした多才な人。劉生はその息子で「麗子像」で知られる画家だ。
 
 今回の企画展は、第一章が岸田吟香、第二章で岸田劉生と、二章立ての構成で約100点を展示している。岸田親子の芸術活動を通して、日本の近代化が西洋化のみではなく、東洋からの影響を受けていることを紹介する展覧会だ。
   
 岸田吟香は挙母藩内藤家の飛び地所領であった国(現在の岡山県)の農家に生まれた。幼い頃から神童とうたわれ、江戸で学んだあと挙母藩の儒官となって挙母城(七州城)で講義を行っていたという。しかし3年ほどで脱藩し、明治期には近代のさきがけとなる事業に次々に取り組んだ。日本初の従軍記者として台湾出兵に同行したほか、実業家として石油掘削、製氷、定期船航路、視覚障がい者教育、日清交流などさまざまな新事業に携わっている。
 
 吟香のマルチな才能は詩・書・画に通じる文人としても優れ、特に書は中国(清)から最先端の書風を日本にもたらし、自身も中国風の書作を行っていた。
 
 第一章ではそうした吟香の人となりや、近代日本の書を展示。幕末の三筆に代表される近世後期の書から明治・大正期に至る日本の書の流れを、多様な人物とその作品で紹介している。ずらりと列べられた書の数々は圧巻だ。
 観覧料は一般1000円、高校・大学生800円、中学生以下無料。関連イベントとして今月25日14時からは、愛知東邦大学客員教授の増田孝さんによる講演会もある。参加無料で要申込。詳細は博物館ホームページへ。
 
 なお常設展示室でも、岸田吟香のマルチな才能の数々を紹介していておもしろい。   【新見克也】