豊田の地酒「菊石」新体制で再出発
来週から新たな酒造り 杜氏は夏目良典さん 2026.10.30
新体制の浦野酒造で代表を務める浦野治郎さん(88)と、杜氏を任された夏目良典さん(49)。
豊田市猿投地区の四郷町で江戸時代から続く地酒「菊石」の浦野合資会社=浦野酒造=が経営体制を刷新し、それに伴い杜氏(とうじ)が辞職して今後の酒造りがどうなるのか心配されていたが、新しい杜氏を迎えて再スタートを切った。ただこの冬は酒造りを行わず、新しい設備の導入に専念して、来春までにはまったく新しい形で酒造りを再開したい考えだ。
ユネスコの無形文化遺産に「伝統的酒造り」が登録され盛り上がりが期待された日本酒業界だが、全国的に酒蔵の経営はさまざまな要因で厳しく、小規模な酒蔵では倒産や休廃業が相次いでいるという。浦野酒造でも経営を立て直そうと経営体制を刷新し、これまで役員を務めていた浦野治郎さん(88・知立市)が代表社員に就任した。四郷出身の浦野一統の人で不動産の仕事をしているという。浦野代表は「もちろん160年続けてきた酒造りには良いところがありますが、時代や消費者のニーズに合わせて小ロット・多品種の酒造りに切り替えたい」という。これまで続けてきた昔ながらの「寒仕込み」をやめて新しい設備を導入し、ほぼ年間を通して酒造りを行う「四季醸造」に転換する考えだ。歴史ある酒蔵は残していく。
酒造りの最高責任者である杜氏には、夏目良典(よしのり)さん(49・新城市)を迎えた。夏目さんは東三河の設楽町出身で、26歳のとき地元の関谷醸造㈱(蓬莱泉)に入社して23年間勤務してきた。このうち15年間は稲武工場にいて蔵人頭(かしら)も務め、3年前には本社工場に戻って副杜氏も務めた。最近は自分の酒造りをしたい気持ちが芽生えて杜氏になれる酒蔵を探していたところ、浦野酒造が杜氏を探していると知り、縁あって転職することになった。
夏目さんの当面の仕事は貯蔵してある菊石を販売しつつ、酒蔵に新設備を導入するための設計を行うことだ。前職場でも最新設備で四季醸造に近い酒造りをしてきたので自信はある。来春までに、一日でも早く酒造りを始めたいそうだ。通常商品の他にも「山廃仕込み」や「生もと造り」などの特徴ある酒を綺麗な味に仕上げて出したいと構想している。
プライベートではフルコンタクト空手の選手として、また子どもたちへの指導者として活躍している夏目さん。30歳の頃に一旦は空手から遠のいたが、自分の子どもが習い始めたのを機に再び稽古を始めた。今年5月末に東京で開催された全日本フルコンタクト空手道選手権大会のシニア45歳以上50歳未満・中量級で優勝した実力者だ。
なお当面、浦野酒造の店頭販売は不定期(火・金曜中心)なので、営業日はホームページやインスタグラムで確認して欲しいそうだ。新しいスタッフも募集している。 【新見克也】